[AdventCalendar2020]スピードキュービング界における中年の参入

Academiathlon

この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2020の5日目の記事です。4日目の記事はTK16zaemonさんの「息子らに影響されてスピードキューブを始めた中年はかく思う」、明日6日目の記事はSCJ代表理事の大村さんの「精読SCJホームページ」です。ちなみに私が今回のSpeedcubing Advent Calendarを書くのは3回目。この場を提供していただいたSinpeiArakiさん、ありがとうございました!

1. なぜ中年(おっさん、おばさん)の参入が必要か

11月28日のアナウンスの通り一般社団法人スピードキュービングジャパンがスタートした。新法人の活動理念である「スピードキュービングの健全な発展」に私も微力ながら貢献していきたい。

さて過去の日本のスピードキュービング界の中心メンバーは学生さんや若い社会人である。これは非常に良いことで、今後も競技や大会運営の方面で若い人たちが引っ張っていく元気な業界であってほしいと心から希望する。

一方で愛好者の中で中年が非常に少ないことを危惧している。社会的信用があり経済的にもゆとりがある中年が増えれば増えるほど可能性が拡がり、新たな事業展開や雇用機会が創出されると考えるからである。中国では学習塾の一つのカテゴリーとしてキューブ塾があり、またWCAでない大会(SCJ大会のようなイベント)であっても十分にお金が回っている。これを若い人たちだけで一から立ち上げるのは難しいと考える。

本稿では、「スピードキュービングの健全な発展」のために中年の参入が必要だ、との仮定の下、如何にして多くの中年のキューブ愛好者を増やすかについて論ずる。

2016年北京アジア大会に来ていた中国学習塾チーム
スピードキュービング塾の宣伝

2. なぜ中年が少ないか

2.1 イメージ

キューブは玩具に分類される。電子ゲームは別としても、中年になってまでも玩具に時間を使うという発想が、そもそも中年にはない。また1980年代のルービックキューブ(R)の回しづらいパズルという感覚を覚えている中年にとって「スピード」キュービングというアイデアにたどり着かない。

2.2 できない

「キューブは自力で解くべきもの」「ネットで調べてキューブは解くべきでない」という心がピュアの中年が一定数いる。そういう人たちはことごとく途中で力尽き「5面までは完成できるようになった」「適当に回していたら偶然そろった」等という不思議なコメントを残してキューブを諦めていく。

2.3 集中力が続かない

一定の記憶を必要とするキューブ技術は継続的に鍛錬を積むことが必要とされる。しかし中年になるにつれ社会的な義務や役割が増え、家庭のことや仕事のことでキューブに集中できなくなる。集中力が続かないのではなく、集中できないのである。そしてキューブをやめてしまう。

2.4 原状復帰の難しさ

キューバーなら誰でも経験したことがあると思うが、一定期間練習しないと原状復帰するためにしばらく再特訓することが必要とされる。これが打算の塊である中年にとってハードルとなっている。過去の経験から再特訓に必要な負荷と労力を瞬時に計算し、再特訓をしない理由を瞬時に思いつくことができる。中年は悲しい生き物である。

2.5 残酷な比較

スピードキュービングはタイムといった明確な指標で争う競技である。言い換えればタイム以外の競技的な要素は少ない。そのような中でネットでの若い人たちの「タイムがクソ」「〇週間で10秒縮まった」等といった投稿は中年の心を完膚なきまでにズタズタにする。
「子供の人生の中で親の能力を超えたもの」で統計をとるとキューブが上位に入るのではないかと思われる。プライドの高い父親・母親にとっては耐えがたい事実を突き付けられる。

オジサンたちにおなじみの日本配色のキューブ

3. スピードキュービング界への中年の参入

3.1 他競技を参考に

3.1.1 参入障壁(ゴルフ)

中年の趣味の王道である。私も30代から40代前半にかけてハマった。始める前は時間も費用もバカにならない競技であり、その面白さは分からなかったが、いざ始めてみるといろんな側面でゴルフが好かれる理由が分かった。

特に注目したいのは、ゴルフを始める際のハードルの高さである。ゴルフを始めるためには時間的、経済的、そして精神的余裕が必要である。この3つをそろえることは社会人にとって非常に困難であり、これらを克服した者だけが競技者となりえる。この競技者により構成されるゴルフ界隈には一定の社会的に確立されたスタンダードがある(例外はあるが)。「品位・権威」といっていいかもしれない。ゴルフ協会やゴルフ産業もこの「品位・権威」を死守すべく、広告戦略やプロへの教育を徹底している。中年たちは、そこに安心を感じ、自分の時間と金銭を投資する。

スピードキュービングは、まずはその楽しさや可能性を広く伝え、老若男女を問わずアプローチし、参入障壁を低くし、多くの方にキューブを手に取ってもらうステージかと思う。その戦略は正しい。その次の段階として「品位・権威」を用いて中年に訴求することが必要とされるであろう。

手段はいろいろとある。他力ではあるが、キューブ業界に社会的地位のある著名人(政治家や企業家)を巻き込むことができれば一気に潮目が変わるかもしれない。標準配色を改めシックな配色のキューブや重厚感のあるタイマーを導入するなどすることも考えられる。

スピードキュービングジャパン創立後、スピードキュービング文化の発展には「普及」のみならず「品位・権威維持」という観点は失ってはいけないと考える。

3.1.2 偶然性(釣り)

釣りにはビギナーラックが存在する。全くの素人が玄人を凌駕するケースもある。一方でスピードキュービングにおいてはそのような事象は起こりえない。

この辺の偶然性などの要素をとりいれるべく、3年前にくるくる会でNST(Normalized Solving Time)を導入した。NSTの詳細については2017年のSpeedcubing Advent Calendar 2017に掲載している。

新法人(SCJ)においてはSCJ大会という応用のきく競技の設定ができる。NSTではないにしろ、上記偶然性の寄与率が高まる何らかの仕組みが導入されれば、より多くの中年が参入してくるかもしれない。

3.1.3 うんちく性(将棋・囲碁)

将棋・囲碁には多くの戦法が存在し、それぞれがカッコいい名称となっている。また諺も多い。例えば、石田流三間飛車、村正の妖刀、玉の早逃げ貼って得あり、などである。

一方でスピードキュービングにおいては、LBLや3-styleなど、動作や事象を直接表現した実用的な名称が使われている。これはこれで残しておくとして、キューブ実況において「3 style~、別名『疾風迅雷交換』~」とか「PLLスキップ~、『曇華一現』~」といった中年ごころ(虚栄心)をくすぐる表現があれば、キューブの玩具性という側面が薄れ、中年が参入しやすくなるかもしれない。

3.1.4 収集性(カメラ)

キューブの性能は日進月歩であり、2020年末であっても技術革新は続いている。しかし、基本的な構造が決まっているが故にいつかは飽和状態になることは明らかである。その際に、人は何を基準にキューブを選ぶか?

その一つの回答は、「カスタマイズ性」かと思われる。競技者それぞれの手の大きさや指の長さ、握力、色の認識能力、など人によって調整できる要素は多い。この辺が学際的に研究され、体系化されれば、出来合いのものを販売するのではなく、その組み合わせをコンサルするサービスを販売することができ、多くの中年の収集欲を掻き立てることができるのではないかと思う。

3.2 中年が活躍できる場

さて本題、実はこれを伝えたくて本稿を寄稿した。

「中年のなれの果て」の代表格であるトライアスロン。トライアスロン愛好者の多くはタイムへのこだわりよりも「完走できたか、できなかったか」に重点をおいている。競技の結果というよりも、そこに行きつくまでの過程(練習や設備の手配)が大事なのである。

現在トライアスロン人口は30万人(平均年齢40歳中盤)をはるかに超え、その数は加速度的に増えている。この勢いにスピードキュービングも合わせたらどうだろうか?

2015年夏、このアイデアを思いつき、Academiathlonという競技を始めた。スポーツジムで完結させることができる。競技は以下の組合せをベースにタイムを競うというよりも完走できるかどうかを競う。

  1. スイム+両手キューブ
  2. エアロバイク+目隠し競技
  3. ルームランナー+片手キューブ

Academiathlon promotion clip No.2
Academiathlon promotion video
Academiathlonのプロモーション動画

まだまだ普及活動が十分ではなく、社会における認知度は非常に低いものではあるが、運動と知的活動を組合わせた新しいタイプの競技として可能性はあると今でも思っている。

何か始めたいと思っている中年キューバー! 若い人にはタイムではかなわないけど、体力には少し自信がある中年キューバー! 是非、Academiathlonにチャレンジしてみてはいかがでしょうか! 人数が集まれば、練習会・競技会を開催したいと考えています!

是非ご連絡ください。Academiathlon問い合わせ窓口

比較的時間や経済的に余裕のあるトライアスリートがスピードキュービングに参戦することにより、よりスピードキュービング界が盛り上がることを期待する。

4. 最後に

一部の愛好者の特殊な趣味だったスピードキュービングも、新法人(SCJ)が設立され、いよいよ発展・拡大のステージに入ったと思われます。これからも若い力を中心に面白い企画や活動が展開されることになると思いますが、スピードキュービング界の中年の一人として、中年におけるスピードキュービングの在り方というものを引き続き、考えていきたいと思っています。

(了)

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