1.MOBIKE(摩拜博客)
北京の街中に溢れているオレンジの自転車、北京で話題のMobike(摩拜博客)である。この仕組みが凄い。
- 自転車のシェアリングサービス。
- 全体的に頑丈な作りの自転車。タイヤは芯が入っていてパンクしないとのこと。
- 利用には299元(4,500円)の証拠金。
- 上記の証拠金に加えて利用料をデポジット。
- 支払いはWechatかAlipay。
- スマホ上の地図で近くにある自転車を検索・指定することで15分間の確保できるので乗りはぐれることはない。
- 自転車に張られているQRコードをスマホで読み取ることでロック解除。
- 30分で1元(15円)。
- どこの自転車の駐輪スペースでも乗り捨て可能(専用の駐輪ステーションは存在しない)。
市内のどこの駐輪スペースで乗り捨てても良いということで自由度は高い。現在、街のいたるところにオレンジの自転車が乗り捨てられている。もう少し数が増えれば社会インフラとして十分に機能するように思う。
2.究極の防犯シェアシステム
この自転車シェアサービスのポイントは自転車をシェアリングするところではないと思う。このサービスは防犯システムという社会システムのシェアリングサービスだ。
新規アカウント入手時に100 Mobike Creditが与えられる。この100 Mobike Creditが80になった時点で利用料金が1元/30分から100元/30分に跳ね上がる。だからMobikeユーザーはこのMobike Creditを増やす(減らさない)必要がある。
このMobike Creditは以下のように加点・減点される(Mobikeマニュアルより)
Mobike Credit加点
1.利用ごと | +1 |
2.自転車の破損のレポート(チクリ) | +1 |
3.不適切な場所での駐輪のレポート(チクリ) | +1 |
4.他人の招待に基づく登録 | +2 |
5.他人を招待して登録させる | +2 |
Mobike Credit減点
1.Compoundでの駐車 | -20 |
2.警察にとめられたときに自転車を放棄 | -50 |
3.ロック忘れ、自転車は戻ってくる | -100 |
4.私物のカギを使う | 0に減点 |
5.ロック忘れ、自転車が戻ってこない | 0に減点 |
6.不法に自転車を移動 | 0に減点 |
つまり違反をしてしまいMobike Creditが少なくなってきたユーザーは、スマホ片手に街に繰り出して自転車の破損や不適切な駐輪を見つけてレポートすれば(チクれば)、Mobike Creditを獲得できる。まさにポケモンGO!ならぬチクりでGO!である。
この相互防犯システムにより運営者の管理業務への負担が減ると同時に、ユーザーの不適切な使用に対する抑止力になっている。
取り締まる人間が、どこの誰かもわからない他のユーザーと考えると、得体の知れないプレッシャーとなる。不適切な使用を控えるのは勿論のこと、不適切な使用と誤解されないように配慮するようになる(私だけかな?)。自転車の取締まりや管理が専任者ではなく素人に委ねられているところが凄い(怖い)。
この防犯という社会システムをシェアする仕組み、今後の動向に注目である。
このような社会インフラは車の駐車違反の取り締まりや、歩きたばこやポイ捨ての抑止力にも応用できそうだ。同様に考えればいろんなシェアリングサービス(チクりサービス、相互監視)が考えられる。
- ダイエットしている人たちが「ハンバーガーを食べている姿」「夜食を食べている姿」「タクシーに乗っている姿」をチクりあう。
- ゴミ拾いや道案内などの『善行』をチクりあう(褒め合う)。
IoT時代、生きづらい世の中になる。
3.既存の公共自転車サービスとの違い
もちろんMobike以前に公共自転車サービスは至る所に存在する。北京市も2012年ころから導入していた。これは駅前や繁華街等に自転車ステーションがあり、そのステーションを発着地点としてレンタルできる。利用にあたってはSUIKAのような非接触カードを使い、利用料金も安い。造りもしっかりした自転車で整備も良く行き届いている。
しかし実際に利用している人は少ないように思うし、自分も利用したことがない。自転車の利便性は発着地点の自由度にあるが、ステーションの位置が限られている既存のサービスは利用場面が想定しづらい。行き先が分かっていればバスか地下鉄を使う。
一方でMobikeはそういう縛りがない。ここが大きな違いだと思う。
4. 中国のスピード感
このMobikeサービス、北京だけではなく上海や広州でも展開しているとのこと。日本だったら「〇〇市で社会実験してから、、、」「投資対効果を図ってから、、、」「市民の皆さんのご意見を聞きながら、、、」となるであろう。
更に既存の公共自転車サービスを提供している北京市がMobikeを認可したのも驚くべきことである。Uberすら認めない日本の行政と大きな違いである。(Mobikeの創業者は元Uber中国の総経理だった方だそうだ。)
そして最も驚くべきことは、このような新形態のサービスにきちんと中国の方々がキャッチアップしている点である。実際に中国で生活すると分るが、今の中国では「Wechat/支付宝による決済」「二次元バーコード決済」を利用できないと生活できない。道端の露店で2元(30円)の物を買うのもWechatで支払うことができるし、実際にほとんどの人が利用している。
この二次元バーコードというのが絶妙である。カメラ付きスマホ以外の特殊なハードウェアを必要としない。日本でもコンビニやスーパーで非接触カードが利用できると思うが、社会の隅々(祭りの出店等)まで電子決済の仕組みが導入されているところは少ないだろう。ハードウェアを準備する必要があるからである。
このように普段の生活に入り込んだ技術に慣れ親しんでいる中国の方々にとってMobikeは別に革新的なものでも何でもなくサービスのOne of themなのだろう。
いずれにしても、このような新形態のサービスを素早くそして大胆に導入する中国のスピード感、驚くばかりである。
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